Shopify アカデミーの「Shipping and Fulfillment Fundamentals」ラーニングパスの2つ目のコース「Shipping Settings and Strategies」コースでは、ECビジネスにおける配送設定と戦略の構築方法を学びました。
配送は単なる作業ではなく、顧客の手元に届くまでを含めて「ブランド体験」をどう設計するかが問われると実感しました。
Shopifyで考えるビジネスに合った配送戦略とは?
配送はビジネスのスタイルや規模によって最適解が変わります。Shopifyにはさまざまな形のビジネスに合わせた配送戦略を選べる柔軟性があります。
ただしこれらのうち多くはアメリカを中心とした国・地域での利用が前提となっており、日本国内の事業者が同様の恩恵を受けるには制限がある点には注意が必要です。
Shopify Shipping
ラベル作成や送料割引などShopify管理画面内で完結できます。アメリカ・カナダ・オーストラリアの国限定の機能ではあるものの、対象国のShopifyのお店にとっては非常に便利です。
Shopify Fulfillment Network(SFN)
Shopify公式のフルフィルメントサービスです。在庫管理から発送、返品処理まで丸ごと任せたいお店向きです。こちらも利用できる国がアメリカ・カナダと限られています。
Managed Markets
アメリカ国内のビジネスのみ利用できる越境EC向けの統合サービスです。関税、現地通貨、配送業者との連携などをまとめて管理できます。
Third-party logistics・サードパーティ物流(3PL)
外部の物流業者に発送業務を委託する形で、国や規模に関係なく選べる自由度が魅力なサービスです。国やエリアを問わず柔軟に選ぶことがます。
配送コストに影響する要素
適切な送料を設定するためには、以下の要素を考慮する必要があります。
要素 | 内容 |
---|---|
重さ・サイズ | パッケージの実重量または寸法重量 |
配送元と配送先 | 距離や地域によって異なる |
トラッキング | 有無によって料金が変動 |
保険 | 損害・紛失対策として任意で付帯可能 |
配送コストが利益を左右する
ECにおける配送費用は“意外と見落とされがちな経費”のひとつです。実際、オンラインストア運営者の年間コストのうち約8.7%は配送関連が占めていると言われており、3人に1人が「想定外だったコスト」として配送費を挙げているという調査もあります。
こうした見積もりの甘さが利益圧迫につながり、薄利や赤字を招く原因になりかねません。販売戦略を立てるうえで、配送コストは事前にしっかりと組み込むべき重要な要素です。
アパレル商材(ワンピース)での価格設計例
アパレルのワンピースを¥24,000で販売したい場合、コストの積み上げと利益率の確保を意識して価格を設計してみます。
コスト構成の一例:
項目 | 内容 | 金額(目安) |
---|---|---|
原価 | 生産または仕入れにかかる費用 | ¥7,200(原価率30%) |
梱包資材 | 袋・包装紙・タグなど | ¥300 |
配送費 | 全国一律の宅配便想定 | ¥800 |
決済手数料 | クレジットカード決済(3.5%想定) | ¥840(= ¥24,000 × 3.5%) |
合計コスト:¥9,140
販売価格と利益のバランス
上記のコストをもとに粗利益を計算してみます。
- 販売価格:¥24,000
- コスト合計:¥9,140
- 粗利益:¥14,860
- 粗利益率:約61.9%
このように配送費や決済手数料も含めて設計することで、必要な利益率を保ちながら価格設定が可能になるという考え方です。
価格設定を「なんとなく」で取り組むと気づかないうちに利益を圧迫する原因になり、特に配送コストは“売れた後に発生する見えにくい費用だからこそ、最初の設計段階からしっかり計算に組み込んでおくことで初めてビジネスが成り立つと痛感しました。
Shopifyの「配送プロファイル」でできること
商品ごとに送料を変えたいときや、特定の地域にだけ送料無料を提供したいときなどに柔軟で戦略的な送料設計が可能なShopifyの配送プロファイルが強力な味方になります。
たとえば:
- 小型商品はクリックポスト、家具は宅配便
- 北海道と沖縄だけ送料を上乗せ
- 10,000円以上購入で送料無料
細かい戦略が実装しやすいのは、細かいところではありますがEC運営の安心材料だと思いました。
梱包や返品ポリシーも、ちゃんと“体験”に含まれている
配送戦略を考える上で「安く・早く」に目が行きがちですが、それだけでは足りません。
現代のECにおいては「どのように配送されるか」だけでなく、「どのように梱包されているか」も顧客満足度に影響します。また返品ポリシーも顧客に安心感を与える大切な要素です。
Shopifyは以下の返品タイプに対応しています:
- 全額返金
- 商品の返品
- 商品交換
- ストアクレジット
Shopifyは返品ポリシー作成ツールも提供してくれていて、テンプレートを元にしながらビジネス形態に合った形にカスタマイズできる点もありがたいです。

越境ECのハードルとその乗り越え方
海外に商品を届けたいと考えたとき、多くの事業者がまず直面するのが「配送コストの高さ」や「関税・通関手続きの煩雑さ」です。実際、国際配送は国内と比べてコストも手間も大幅に増加します。
特に注意すべき要因には以下のようなものがあります:
- 長距離輸送によるコスト
- 関税・輸入税
- 通関書類の複雑さ
- 各国規制への準拠
こうした課題をすべて自社で対応しようとすると、運用コストがかさむだけでなくトラブル発生時のリスクも高まります。
そこで現地に拠点をもつ3PL(サードパーティ物流)業者やアメリカ国内のビジネスのみではあるものの、ShopifyのManaged Marketsの活用が越境ECに取り組む際の現実的かつ有効な解決策になります。
どちらも国際取引に必要な手続きを一部自動化・代行してくれるため、越境ビジネスへのハードルを大きく下げてくれます。
まとめ:配送は「最後のサービス」である
このコースを受けて一番印象に残ったのは、「配送」は単なる事務作業ではなくお客様との最終タッチポイントでありそこで“誠意”が伝わるということでした。
ECにおいて配送は裏方に見えますが、実際には顧客体験の「最後の一手」を担っています。
どんなに良い商品やデザインでも配送に不備があれば台無しになってしまうからこそ、ただの作業にせず“戦略”として考える必要があると感じました。